「SOUTH 2 WEST 8」のバッグシリーズを、いよいよ海外へオフィシャルに紹介する。
今まで「SOUTH 2 WEST 8」のイメージ写真はすべて自分が撮影してきた。モデルとして起用していたカイルはシアトル郊外出身で、北大の大学院に所属する獣医。知床への調査出張や研究の合間を縫って、北海道での撮影に毎回参加してくれていた。自然の摂理みたいなものをリアルに分かっているからだろう、森でも川でもその所作には迷いが無く、自然のなかでの動きが実に絵になる男だった。
北海道を本拠地とするブランドのアメリカ製バッグを、NYのトレードショーでアメリカのバイヤーに見せてみようというプロジェクト。これに合わせて、新しいイメージブックも制作することになった。ただ、今回のブックはバッグに特化したもの。長らく一緒に仕事をしていたカイルは登場せず、バッグの写真だけで構成されることに。どんな風に撮るか、そんな話しを清水さんとしていて出て来たのが20年前に装飾家・沖山潤さんがネペンテスの為に制作したモカシンブランドIROQUOISのブック。潤さんが手掛けたインテリアの仕事と同じく、強烈な印象で頭に残っていた。その記憶が決め手となって、撮影のディレクションを沖山潤さんにお願いした。そして一瞬の閃きで、撮影は正田真弘にお願いした。両人とも二つ返事で了解してくれた。

いま写真家としてノリにのっている正田が、潤さんの発想をどう料理するのか。撮影は潤さんが住む東京都八丈島。羽田から50分で着く亜熱帯。群生したキダチアロエが咲き乱れ、モンステラが野性化し、いたるところにオオタニワタリが自生する。それとは対照的なアトリエ兼今回のスタジオ。


スタジオに集められた大量のプロップの中に、無造作に置いてあった古い写真集。実は潤さんが持っていたこの古いブーケの写真集こそが、ネペンテスのロゴデザインの原点だったりする。

空港からそのままロケ地に入り、いきなり自然と対峙する正田。

駆け上がる正田。

寝転び撮る正田。

一発目のショットのために潤さんが用意した小道具で、いきなりスイッチが入った正田カメラマン。
読みは的中して絶好調。撮影しながらレイアウトやデザインが浮かんでくる理想的な撮影に。

山での撮影が終わる頃、GOO FACTORYのお二人がふらっと登場。
ワタさんとミサオさんは、かつて潤さんが東京で主宰していたデコレーション会社パトロールを経て、GOOFACTORYを設立した。師匠が久々に清水さんと仕事をするというのを聞いて、さらっと八丈に。
そういうこと。しかも、撮影中は何も言わずにパパッとこちらが気持ちよいところに手を届かせてくれる。お陰で翌日の海ロケも快調に進み、撮影は予定より早く無事終了。皆で天然温泉に浸かり、蕎麦を喰らい、夕刻を待たずして二人はさっそうと東京へ戻って行った。素敵です。


短く濃密な旅だった。今回撮影したイメージは着々と編集中。
年明けにはウェブサイトにてアップできる予定です。ご期待下さい。
家のガラス試験管には、温泉の崖で見つけたツル性の植物ホヤがさしてある。
小さく萎れていた葉が息を吹き返すと、野性味がじわじわと。
それを見る度に旅の記憶がふつふつと。