
NEPENTHESの服がすごく似合う人たちに着せたい。REMIXの打ち合わせで、岡部が最初から言っていたのは、単純にそういう事だったと思う。じゃあモデルは誰なのかと打ち合わせが進んでいって、
最終的に出てきた人達の苗字が一致していることに気付いたときは、さすがにこれはヤバいと思った。しかし同時に、どうしてもこれでやりたいという結論になった。
そのとき既に岡部の中には、小林ズというネーミングとトレードマークを作るというイメージが出来ていた。全員が彼の大好きな人達だったから、もしみんなが同じグループだったら何て素敵なんだろう、という純粋な想いからの発想だ。
そして、そのときから岡部の緊張も始まっていた。きちんと話さないと、名前ありきで呼ばれたんじゃないかと出演者に誤解されかねない。ましてや相手はお世話になった大先輩の面々だ。自分も想像しただけで気が重くなった。「緊張するーっ」を連発する岡部を励ます様に、まあ無理しないでとりあえず話してみよう、という事でその日は別れた。
数日のあいだ岡部からは連絡がなく、こちらとしてはほぼ諦めていたところに、唐突に全員快諾とのメイルが届いた。全員一線で活躍されている大人相手の、このミッションは相当高い。

特に小林節正さんは、ご存知の通りご自身で「......RESEARCH」を手掛ける洋服の作り手だ。人のブランドの服を着てモデルとして出るのは、普通に考えて非常に難しい。NEPENTHESだったら大丈夫
だと言って頂いたと聞いて、素敵だなあと嬉しさをじんわり噛み締めた。節正さんには自分がNYに行ったばかりの時など、よく食事をご馳走になった。当時のNYの店にもちょくちょく遊びに来てくれて昔からうちがやっていることを面白がってくれている、同業者の大切な理解者だ。
いつか恩返しがしたい。

薫さんも、崇さんも、節正さんも、みな人間力が強くて、何でも自分のモノとして着こなしてしまう。岡部の読みは間違いなかった。楽しく緊張感のあるとても良い現場で、カメラマン安部英知さんの仕事にも痺れた。皆さんに深く感謝。
スタイリスト岡部文彦は、俗にいう少年のような人だと思う。人懐っこくて、凄く良いヤツで。
しかし、にこにこと元気に無邪気に振る舞っているが、実は落とし所が最初から細かいところまではっきり見えていて、虎視眈々とそのチャンスを窺っている。何だかんだ周りを自分のペースに持っていって、最終的には自分のやりたいことを形にしてしまう。それでいて皆も知らぬ間に、にこにこしているのだから敵わない。"KOBAYASHIS"を見てくれた人もきっとそうに違いない。
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