"筋金入り" っていうのは、こういうことだと
亀山亮さんの写真集を見て思う。亀山さんは、小学生の時に「絵本東京大空襲」「はだしのゲン」と出会い、中学生の頃すでにドキュメンタリー写真に目覚め、高校三年生の時には成田空港の建設に反対していた農家に泊まり込み、三里塚での写真撮影を試みていたそうだ。プロフィールを見るとまだ30代半ば。76年生まれで、高校生の頃にあの "三里塚闘争" に関心を持っていたという事実だけをみても、その異質さと特異な感受性が窺える。
その後は、メキシコ、コンゴ、コロンビア、パレスチナ、シエラレオネ、リベリア、ブルンジなど、数々の匆々たる紛争地で撮影を敢行し写真集として発表。数々の賞も受賞されている、筋金入りのドキュメンタリー フォトグラファーだ。

今年9月に出版された
「AFRIKA WAR JOURNAL」では、アフリカ各国の危険地帯で撮影された写真と共に、撮影の裏側が赤裸々な言葉で綴られた「写真の日々」と題された文章が読める。紛争によって不法地帯となった最前線の何があってもおかしくないカオスのなか、不条理や嘘に翻弄される体験談は、読んでるだけで疲れて気が滅入る。パレスチナでは本人が被弾して、片目の視力も失った。
そんな体験をしてもなお、取り憑かれたように繰り返し現場へ舞い戻る。その理由は何なのか、フォトグラファー/ジャーナリストとしての性 (サガ) なのか。写真集を何度開いてみても、正確な答えは見つからない。ただ、今この時も地球のどこかでは凄まじく最低な出来事が起きている、という当たり前の事実が胸に突き付けられる。見てるこちらの覚悟が試される、そんな写真集。一読者として、忘れがちなリアルを気付かせてくれる亀山亮さんの活動に感謝したい。どうか体に気をつけて欲しい。

男が頭に乗せているのは "筋金"、ではなくコンピューターのケーブル線。
この
ピーター・ヒューゴの写真集のタイトルに使われている「PARMANENT ERROR」という言葉は、多くの人が一度は目にした事のある言葉だと思う。送ったはずのメイルが相手に届かなかったとき、コンピューターが何回も送信したけど相手には届きませんでしたよ、という意味で「PARMANENT ERROR/永続的エラー」というメッセージが元のメイルに付いて戻ってくる、あれ。
この写真集は、ガーナのアゴグブロシという場所が舞台。ここには寄付/支援という名目で、欧米からの要らなくなったコンピューターや産業廃棄物が送られてくるそう。殆どが使われず、村はゴミで溢れる。貧しい人々は、コンピューターからケーブル線を引っぱり出し、またはそのまま全部燃やし、燃え跡から銅や金属を抽出して僅かな金に変えて生活している。一日中火が消える事は無く、ゴムやプラスチックが燃える事で有害物質が大気中に撒き散らされる。
そして、その有害物質は風に乗ってヨーロッパまで届く。おまけに個人情報流出問題のおまけまで付いてくる。まさに、デジタル時代の "永続的な過ち" が、ここガーナで起きているということ。

Photographs by Pieter Hugo
シリアスな題材でも、写真は素晴しくかっこいい。単純に好き。これはドキュメンタリーでも、アートの視点からのアプローチ。タイトルの妙にもやられる。
この写真を撮った
ピーター・ヒューゴは、何年か前にナイジェリアでハイエナを飼う男たちのポートレイトも発表していて、それもすんごく良い。否応無しに、見てるこちらの想像力がめちゃくちゃ働いてしまう写真。

Photographs by Pieter Hugo
奇遇にも、ピーター・ヒューゴは亀山亮さんと同じ76年生まれ。そして、亀山さんは八丈島に在住されているらしい。八丈島にはやっぱり縁を感じてしまう。
そして、たったいま知ったのだけど、11月30日まで東京の曳舟で亀山亮さんの展覧会をやっているそう。観に行こう。帰りは森下までちょっと足を伸ばし、山利喜に寄るコースで。
「亀山亮写真展・AFRIKA WAR JOURNAL」