博多店オープンまで一週間。段取りがようやく終わり、あとは現地での作業を残すのみ。ということで、八丈島で撮影した「
SOUTH2 WEST8」のことを少し回想。
八丈島は風が強くて、飛行機の着陸が実は結構ヒヤヒヤ。天気が悪くなくても、風が原因で降りれず羽田に戻った、なんてこともよく聞く話。でも、今回我がチームを待っていたのは雨との戦い。沖山潤さんと亜熱帯特有なこの環境を生かしてウェットなイメージを撮ろうなんて話してるのを、カメラマンの
リンタロウは恨めしそうに聞いていた。

何せハウスの中でさえ、こんなシャワーを浴びてるような状態もあったくらいなので、その気持ちは痛い程。カメラマンにとって機材は命。皆で必死にガード。自前のカメラは持ち込まず。。

でもそんな雨があるからこそ、こんな環境が出来上がる。美しい木性のシダやヤシが生い茂るこの滝壺の向かいには、いつも綺麗に使われている公共温泉が。ありがたく浸って英気を養った。

光るキノコも自生。


恵比寿の老舗中華「筑紫楼」が八丈島にもあるのを知る人は少ないだろう。オーナーが大の釣り好きらしく、夏の間だけオープンするという贅沢な店。島で本格中華は何か不思議。でも間違い無し。

そして、島にはクラシック音楽とたくさんの蔵本が心地よい素敵なカフェも。壁には1998年に行われたセゾン美術館でのセルゲイ・ディアギレフのポスターが。このカフェ「トリスタン」は、沖山潤さんが一日の終わりに訪れる、リセットの場でもある。

今回のイメージブックの中で使われている小道具は、実はどれも本物ばかり。日本のジャック・マイヨールと言われるダイバー赤間憲夫さんのツールや、左右で緑と黄色にくっきりと色が別れる貴重なヤシの葉、モッズ少年から羨望の眼差しを受けるポール・ウェラーのオリジナルプリントなどなど、神が細部に宿るごとく何度見ても発見があるような物に出来上がっている。
リールと竿にいたっては、文豪であり偉大な釣り師でもあった開高健(たけし)さんのもの。釣行にスカウトされた八丈島の漁師 山下和秀さんが、本人からプレゼントされ大事に保管していたものだ。カバーに詠まれた「朝露の一滴にも 天と地が写っている」、八丈島の自然の中でこの巨匠の名言がリフレイン。

潤さん、正木、リンタロウ、撮影が終わって皆気が抜けた表情。博多店の店長となる正木は、このロケがNEPENTHES初仕事。ずぶ濡れのデビューおめでとう。
「悠々として 急げ」、同じく開高健さんの言葉。
言霊を胸に、一足先に博多へと。