
撮られる前に撮る。ヤツがオフィスにやってくるときは、いつも負けじと先にカメラに撮り込むようにしてる。背が高くて体もでかい。大男に小さなスナップカメラがまたよく似合う。LOITERって言葉は彼にぴったりで、ほんとに昼も夜も街をうろうろしてる。うろうろしては写し、うろうろしては写し。この間、歌舞伎町で中華を食べて別れたあとも、深夜ひとりで新宿の街をスナップしていたらしい。いつか東京のポリスに容疑をかけられ、警察署までJIMAを引き取りに行く日が来るんじゃないかと思ってる。

オフィスでは発売中の「ブルータス」での仕事を事細かに説明してくれた。今回は、コラムでお馴染みのスタイリスト井伊百合子さんと一緒に「ギンザ」の仕事をやらしてもらうのと、エージェント探しで来日したらしい。
夢中で仕事の話しを聞かされた後、机の角にしゃがみ込んでいきなり靴の話が始まった。ハソーンのオックスフォードが気に入って、欲しくて欲しくて仕方ない模様。

あれはすごくかっこいい、あれが欲しいと話しは止まらず。たんまりと蘊蓄(うんちく)を聞かせたのだけど、そんな事どうでもいいようだった。確かにこのネペンテス別注から生まれたオックスフォード型は名作。ダブルステッチなのが肝なのです。JIMAさんさすがお目が高い。店でもずーっと見つめていたそうで、結局まだサイズで悩んでるらしい。ハソーンにしたって、もしJIMAに選ばれたら、NYまで連れて行かれて一緒に街をうろうろするはめになるのだから、きっと気が気でないだろう。運命やいかに。

好評発売中!
このコラムから初の書籍が誕生しました。
ある格闘家の戦いの記録。
いまを残したいというただそれだけの、
でもとても切実な祈り。
日々の小さな幸せは、
実は奇跡の連続なのだと気づかせてくれる。
写真家・川内倫子
「3回手術すれば生きられます」。娘が誕生した翌日、聞かされたのはそんな言葉でした———。
格闘家として身体を酷使してきた父が、心臓疾患を持つ娘との日々を綴った人気ブログ「パパはね。。」を書籍化。軽やかな文体の中に見え隠れする、生と死の脆さ、命のたくましさ、母娘の強さが、著者自身の撮影による瑞々しい写真とともに心を打ちます。
木村伊兵衛写真賞受賞写真家、川内倫子氏も絶賛。