雑誌『NEPENTHES in print』#1.5 では、細山長司さんのロングインタビューを掲載した。これを読んでいる人のなかで、細山長司さんを知ってる人はごく僅かだろう。しかし、釣りという分野においては、誰もがその名を知る超一流。どんな世界でも超一流の人の話は面白い。シンプルに言えば、細山さんは、やりたいことをやるということに最大限のプライオリティを置いて生きている。そういう人の話は聞いていて気持ちがよく、刺激になる。載せきれなかった話もたくさんあって泣く泣くカットした。これも自分でインタビューした役得か。
細山さんとお会いするのは、その時が初めてだったのだけど、書籍やテレビでの印象そのままの人柄にすっかりやられてしまった。ハンティングの要素が強い釣りという世界では、往往にして威圧的というか、野蛮っていうか、おりゃ〜よしきた〜どうだ〜!って感じの人が多いのだけど、細山さんはなんというか、しなやか。凄いキャリアを持ちながら、全くおごることなく、凛としていて、ユーモアがあって、穏やかな語りが耳に心地良い。自分もあんな風に年を重ねていけるよう精進したい。
細山さんから譲ってもらった細山さん自作のエサ箱。天塩川の石の色とぴたりとはまって風流だった。

実は、蓋裏に「流れの中は夢いっぱい」と細山さんの言葉が。
たるんだ気分はしゃきっとして、エサを付ける度に夢が見れる仕組み。

細山さんの釣りは、川での釣り。
でも、普通の渓流釣りとは違う、本流釣りと呼ばれるものがメイン。テンカラのような毛バリでの釣りから本流釣りまで楽しめるのが、川釣りの懐の深さ。細山さんはその全てに精通している。
そんな細山さんを知るには、これを見るのが一番手っ取り早い。
釣りをしたことがないという人も、必ずアガる動画。これで熱くなれた人は、立派な釣り師のDNAを持ってる。
本流大物師の挑戦 ! カナダの清流にスチールヘッドの影を追う
http://tv.shimano.co.jp/movie/tv/paradise_06/
サムライと呼ばれる本流大物師の挑戦 〜アラスカで巨大キングサーモンと勝負〜[前編]
http://ownertv.jp/detail/?id=143
サムライと呼ばれる本流大物師の挑戦 〜アラスカで巨大キングサーモンと勝負〜[後編]
http://ownertv.jp/detail/?id=144
細山さんのインタビュー中に、開高健の名前が出て来たときには、ちょっと鳥肌が立った。ちょうど別に開高健先生の特集を準備していたのだけど、細山さんはルアーやリールを使わない日本の釣りにこだわり、開高健先生は海外からの影響が色濃いルアー釣り。まさか二人がリンクしてくるとは思っていなかったのだ。自分のなかでは元々お二人はリンクしていた訳なので、案外この直感みたいなものは信じてよさそう。
自分が開高作品と出会ったのは小学生の頃。荻窪ブックセンターという青梅街道沿いの本屋で『オーパ!』を開いたときのことをはっきり覚えてる。大人になってもこんなに楽しそうに遊んでる大人がいるんだ!というのが衝撃だったのだ。それから行く度に立ち読みをして、大人になってもこの人みたいに遊んでいたいと思っていた。
しかし、20代になるとそんなことは忘れてた。
そして、いま40代も半ばの今こんな言葉が心に沁みる。
「自然の森やら河やらの中に入っていって、いろんなものが見えてくるのは、三十五歳以後ぐらいじゃないのかしら。一応いろんなことやっちゃって、人生に限界がもうそろそろ見えてくる。あとは死ぬのを待つばかり、同じことの繰り返しだというふうな印象におそわれてくる。そういうときになって森に入っていくと、今まで見えなかったものがどんどん見えてくる。そういう気がするな。/いろいろなことに絶望し、森の中に入ると新しいものが見えてきて、絶望が別のものに転化する、ということになるんじゃないのかしら。」
開高健『河は眠らない』(文藝春秋、2009)
好評発売中!
このコラムから初の書籍が誕生しました。
ある格闘家の戦いの記録。
いまを残したいというただそれだけの、
でもとても切実な祈り。
日々の小さな幸せは、
実は奇跡の連続なのだと気づかせてくれる。
写真家・川内倫子
「3回手術すれば生きられます」。娘が誕生した翌日、聞かされたのはそんな言葉でした———。
格闘家として身体を酷使してきた父が、心臓疾患を持つ娘との日々を綴った人気ブログ「パパはね。。」を書籍化。軽やかな文体の中に見え隠れする、生と死の脆さ、命のたくましさ、母娘の強さが、著者自身の撮影による瑞々しい写真とともに心を打ちます。
木村伊兵衛写真賞受賞写真家、川内倫子氏も絶賛。