2009年からニューヨーク、サンタクルーズ、エル・パソ、サンタフェの四都市で「NEEDLES」のイメージフォトを撮影した。ほとんどのモデルを自分が現地でハントし、カメラマンの
正田真弘がそれを撮った。現地でのモデルハントは本当に手間がかかるうえ、一か八か。ニューヨークやロスならまだしも、地方都市で数日間しか猶予がないとなると困難を極める。常に人間力が試されて、心身共に削られる。相手の身になれば、どこの馬の骨とも分からない東洋人にいきなりモデルの仕事を振られる訳でそりゃあ普通に考えれば無理な話。
しかし、上手くいったときにはプロのモデルとのセッションでは写らない何かが写り込む。それを求めて、毎シーズンアメリカの市井の人と向き合った。頭のなかにはいつも鬼海弘雄さんの写真があった。「その人の時間の蓄積がずーっと写っている」写真。ファッションポートレイトであっても、自分が魅かれるのはやっぱりそんな写真だった。

上半身裸でサンタクルーズの街を歩いてるのを見つけて、車を急停車。一人で降りて後を追いかけてハントした男性。

サンタクルーズのホテル近くのランドリーに入っていくのを見かけて声をかけたバンドマン。明日からブルックリンでライブだというので、そのままいきなり撮影した。

サンタフェの古着屋の前にあったカフェで声をかけた男性。雰囲気の良いカフェは度々モデルハントの舞台になる。

一番難航した国境の街エル・パソ。高速道路の休憩所にあるスターバックスで、ひとり新聞を読んでいた男性。離婚した奥さんのことが忘れられずに、昔住んでいたこの街のこのスターバックスに意味もなく来ているという話など聞きながら、ようやく首を縦に振ってくれた。
モデルを選ぶ基準をしいて言えば、何かカルチャーを感じさせる人。
そういう人はきっと「NEEDLES」を好きだから。洋服は好きな人に着てもらうのが一番。鬼海さんの言葉を借りれば、着た洋服が「その人の"うろこ"のように」見えるはずだから。清水さんの好きな映画のなかの役者たちのように。
ファッションに興味のある人には特に、「NEPENTHES in print」#2に掲載した鬼海さんの写真を是非見て欲しい。出来れば、写真集を手に入れてもっと見て欲しい。写っているのは、人種を超えた人間そのもの。そして、その誰もが威厳に満ちている。
先週は久々にテレビ取材。日本テレビ「NEWS ZERO」MY GENERATIONコーナーの一部で、
「REBUILD by NEEDLES」をご紹介頂いた。出演は10月よりNEPENTHES TOKYOの新しい店長となる山崎。若い世代のファッションで、ひと工夫を加えた古着が注目されているという内容。見逃した方は、こちらからどうぞ。
http://www.ntv.co.jp/zero/mygeneration/index.html
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ある格闘家の戦いの記録。
いまを残したいというただそれだけの、
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日々の小さな幸せは、
実は奇跡の連続なのだと気づかせてくれる。
写真家・川内倫子
「3回手術すれば生きられます」。娘が誕生した翌日、聞かされたのはそんな言葉でした———。
格闘家として身体を酷使してきた父が、心臓疾患を持つ娘との日々を綴った人気ブログ「パパはね。。」を書籍化。軽やかな文体の中に見え隠れする、生と死の脆さ、命のたくましさ、母娘の強さが、著者自身の撮影による瑞々しい写真とともに心を打ちます。
木村伊兵衛写真賞受賞写真家、川内倫子氏も絶賛。