スタイリスト片貝俊による
REMIXをアップ。
タイトルは一文字で芸人や役者という意味を持つ「俳」。映画やドラマを始めとする映像の世界で、今一際注目を集めている俳優・滝藤賢一さんをモデルに、三軒茶屋の通称”三角地帯”で撮影された。
滝藤さんを初めて見たのは映画「クライマーズ・ハイ」(2008年公開)。横山秀夫さんによる2003年の同名小説を原作として映画化したものだ。タイトルに惹かれて原作を手に取り、山登りの話かと思ったら日航機墜落事故を題材にしていて、さらに興味を持った。地方新聞社を舞台とした人間臭い骨太な作品で、読み始めるとすぐに引き込まれて一気に読んでしまった。内容的には、事故の真相を暴いたり、ヒーローが何かを解決する類の派手な話ではない。組織の中でもがきながら生きる男達の群像劇だ。個人的には「面白かった」というより「好きだ」と言える種類の作品のひとつ。
もちろん映画の公開も楽しみにしていた。滝藤さんは映画のなかで一人の若手記者を演じていた。素人目にも非常に難しい役どころながら、その真実味のある演技で見事な存在感を放っていた。原作を読んだ時点で頭の中で作られていたはずのイメージと、不思議なくらい違和感も無く、それがかえって強い印象となった。果たして、世間一般の評価も高かったようで、その後の活躍は皆の知るところ。
滝藤さんは昔から本当に洋服が好きで、普段から忙しい合間を縫って東京の店にもよく遊びに来てくれている。どのスタッフにも分け隔てなく話しかけ気さくに接してくれるので、皆大ファンになってしまった。前に倉本聰さんがTVインタビューで、「俳優」という文字は「人に非ず人に優しい」と書くでしょと、話してたのを見て膝を叩いた。自分を捨てて優しさを持って他人を理解することで、はじめて他人になりきる事ができるということか。人に非ず、人に優しいものたち。撮影中の滝藤さんを見ていて、その意味が良く分かった。それにしても漢字って本当に洒落てる。
滝藤さんの隠れた主演作として、ファンに届いたらとても嬉しい。
REMIX「俳」絶賛公開中です。是非お見逃しなく。

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写真家・川内倫子
「3回手術すれば生きられます」。娘が誕生した翌日、聞かされたのはそんな言葉でした———。
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