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——

大器さんは、岡部さんのスタイリングに共感する部分が多いと公言されているそうですね。

鈴木:

そうですね。いちばん最初に見たのはなんだったかな。ずいぶん前から雑誌などで、仕事を見ています。なんとなく自分と同じ匂いがするスタイリングだなって。常に気になる存在ですね。

岡部:

ありがとうございます。僕が初めて大器さんとお会いしたのはNEPENTHESの20周年記念パーティでした。パーティの最後、会場の出口で清水さん[※01]、大器さんをはじめ、NEPENTHESのスタッフの方々が並んでゲストの見送りをしてらっしゃって。その時に、ご挨拶をしたら大器さんが、「スタイリングのファンです」って言ってくれて。それを聞いて俺、もう舞い上がっちゃて。そのあとフワフワした気持ちで階段を上がっていったシーンがいまでも脳裏に焼付いてます。

鈴木:

あのときに紹介してもらったんだよね。それで名前を聞いて、あの岡部くんかって思って、「好きです」って言ったんだ。

岡部:

大先輩にそう言ってもらえてすごく嬉しいです。

鈴木:

それで、その後、「ENGINEERED GARMENTS」や、NEPENTHESの服をコーディネイトした仕事を見たとき、素直に「いいな」って思って。感想をメールしたんだよね。

岡部:

はい。NEPENTHESのウェブサイトに“REMIX”というファッションページがあるんですが、徳郎さん[※02]からオファーをいただいて3回やらせもらって。2回目をアップしたときに、感想をいただきました。タイトルは『PATTERN CHASING』[※03]

——

キーとなる柄を追っていくことで、ページが切り替わっていくアイデアがユニークですね。

岡部:

僕の中にあるNEPENTHESのイメージで、いちばん最初に思いつくのが“柄”。いかにもNEPENTHESらしい柄の使い方ってありますよね。あとは紫とか、毒っぽくて濃厚な色づかいとか。

鈴木:

それは総じて清水さんのイメージだね(笑)。

岡部:

そうですね(笑)。一方で、このときに使った2013年春夏のEG[※04]はすごく爽やかなカラーリングで。それをミックスしてコーディネイトを組むのがすごく楽しかったです。もちろんEGのコレクションにも特徴的な柄が沢山あって。柄にフォーカスして、それを追っていくように見せたら面白いかも、と思いついたんです。柄の“しりとり”遊びですね。

——

公開されたときの評判はどうでしたか?

岡部:

これは評判がよかったです。そのなかでもいちばん嬉しかったのが、大器さんから、徳郎さん経由で感想をいただいたことですね。見たときに感動して固まりましたから(笑)。

鈴木:

特に感想を求められた訳じゃなくて、すごく好きだなって思ったから徳郎にメールしたんだよ。仕組みも面白かったけど、特に良かったのはスタイリング。やっぱり、同じ匂いを感じた。

02

——

例えば、どんなところにでしょうか。

鈴木:

長さの組み合わせ、色の組み合わせ、柄の重ね方、柄の大小を使った変化の付け方とか。長年かけて覚えて来た自分なりのポイントとかルールがあるんだけど、それがすごく似ているんだよね。感情移入できるっていうか。俺、実はスタイリングに関してそういう共感ができる人ってあんまりいないんだよ。

岡部:

本当ですか!? 嬉しいです。なんか鳥肌たってきた(笑)。

鈴木:

俺は、もともとはすごくコンサバなファッションからスタートしてて。例えば、ネイビーにはカーキ、もしくはグレーを合わせる、とか。最近は“柄”のヒトって言われたりもするけど(笑)、ガチガチのトラッド好きだった。それからインポートとかDCとかアウトドアとか、いろんなものを体験して、今のスタイルがあるんだけど、そういう積み重ねが、もしかしたら同じような道を辿っているんじゃないかって思うくらいだね。それが面白くて。

03

——

バックボーンや興味を持って来た洋服の遍歴が似ているんじゃないかということですが、おふたりは世代的には離れていますよね?

鈴木:

岡部くんいくつだっけ?

岡部:

僕は38歳です。

鈴木:

俺はもう51歳。

——

ということは、時代を超えて同じようなものに触れてきたとか。

岡部:

僕は高校生の頃、スタイリストに憧れてファッション誌を読み漁っていたんですが、そのころ『CHECKMATE』[※05]で活躍していたスタイリストが、大器さんの弟の鈴木卓爾[※06]さんでした。卓爾さんのスタイリングはすごく好きで、よく参考にしていましたね。そういうことが影響しているのかな。

鈴木:

卓爾はちょっと俺とは違う感じだからなぁ。彼は彼で独特で。卓爾が駆け出しのスタイリストのときは、ダメ出ししたこともあったけど(笑)、今はもう先生だと思ってる。色合わせで遊ぶセンスが素晴らしいよね。見てすぐわかる。

岡部:

ですよね。僕、すごく影響受けてます。ちなみにこの『PATTERN CHASING』のスタイリングは、「FWK ENGINEERED GARMENTS」のイメージブックのスタイリングも意識しました。黒人の女性がモデルの。

鈴木:

あー、トニーさんのときね。2012年の秋冬[※07]だね。

岡部:

このスタイリングが僕的にパーフェクトで。洋服ってシンプルに見せた方がいいっていう人もいますけど、僕はレイヤリングすることで、どんどん魅力が増すと思っています。そのお手本みたいなイメージブック。ここまでレイヤードするか、って感じでした。これ、大器さんがスタイリングされているんですよね?

鈴木:

そうだよ。

岡部:

ファッションデザイナーのなかには、自分で作った洋服をスタイリングできないって方も多いですよね。

鈴木:

スタイリングはしないって人もいるよね。でも、俺はスタイリング好きだよ。お店で販売をしていた期間が長かったんだけど、洋服のディスプレイとか、スタイリングって、ショップスタッフをやっていていちばん楽しい時間なんだよね。店中の服を使っていいし、自分の服以外も使えるし(笑)。

岡部:

その感じ、わかります(笑)。このイメージブックのスタイリングは、レイヤリングの仕方とか、長短の緩急とか、すべてが絶妙でした。ショート丈のベストの使い方、新鮮だったなぁ。僕はトラディショナルなものに対してあえてカジュアルなものを加えたり、テイストのギャップがあるものをミックスしてもカラーリングが合っていればアリ、という考え方なんですけど、もしかしたら、大器さんもそういう感覚を持ってらっしゃるのかなって、これを見て思いました。

04

鈴木:

それはすごくあるね。ほかには、柄物でも少し離れて見ると無地のように見えるものを、“準無地”って呼んでいて。ポルカドットとか、ギンガムチェックとか、柄物なんだけど、それを意識のなかで無地として扱う。そうすると、合わせられる柄が増えるんだよね。準無地と準無地を合わせてもうるさくない。そういう、自分の中の法則みたいなのが俺にもあるよ。まぁ、このイメージブックに関していうと、あった服をそのまま着せたって感じだったなぁ。洋服を作ってると、撮影の時まで、こうやって組み合わせてみたりしないから。

岡部:

え、そうなんですか!?

鈴木:

そうそう。作っている間は、何が間にあってて、何が足りないか、きちんと把握してない。撮影の前日にコーディネイトしてみて、あんな色があれば良かったのになぁとか、こんなアイテムがあれば良かったなとか、気づくんだよね。でも、もう撮影は次の日だから間に合わない(笑)。この時も無理矢理なんとかしたって感じ。

岡部:

エー(笑)。じゃあモノクロにしたのは、色合わせに納得いかなかったとかが理由なんですか?

鈴木:

いや、モノクロに関しては、このイメージブックの撮影の1ヶ月前くらいにメンズのブックの撮影をやったんだけど、そのときに初めてJIMA[※08]ってフォトグラファーと仕事してさ。それまでのシーズンと雰囲気を変えたくていろいろと考えた結果、いちばんドラマチックに変化させるならモノクロかなってことになって。JIMAは、NYのストリートのスナップ写真を撮ってたんだけど、それがモノクロで、すごくいい写真だったから、じゃあ今回はこのノリでやってみようと。それで、ウィメンズも引き続きって感じ。

——

JIMAさんは、それ以来ずっとEGのイメージブックを撮影されていますよね。

鈴木:

JIMAは、日常の一瞬を、こっちが理解できないような独特なフレーミングで切り撮るのが得意なんだけど、俺はその写真がすごく好きで。で、セットアップのモデル撮影をやらせたら、ものすごいダメか、もしくは新しい感覚のちょっと面白いものになるかもって期待があって。最初の撮影はその本領を発揮しきれなかった部分もあったけど、それから1ヶ月後に撮ったこのルックブックはすごく良かった。モデルのキャラクターが良かったっていうのもあるけどね。

05

岡部:

いいですよね。このモデルさん。キャラクターが強くて。

鈴木:

JIMAの魅力は、モデルの動きのいい瞬間を逃さないところ。だからこれは俺からモデルに指示を出していろんな動きをしてもらった。

岡部:

これは大器さんが動きの指示をしてんたんですか。

鈴木:

そう。

岡部:

見せ所が的を得てるなって思っていたんです。機能性とかEGらしいデザインのポイントがよく見えていて。ポケットに手を入れることで隠れていたディテールが自然に表に出たていたり、シルエットが魅力的に見えたり。そういう、細かい部分をじっくり分析して見る楽しみもあります。背中の蝶々結びのチラ見せ具合とか絶妙!

鈴木:

チラ見せは偶然だね(笑)。あと、スタイリングはウィメンズの方がやってて面白いよ。いろいろなトライができて。

岡部:

アイテム的にですか?

鈴木:

メンズは自分で着ているせいもあって、やりすぎると格好悪いって思うから、ある程度ブレーキが効くんだけど、ウィメンズは着せっぱなしだからさ。

——

EGを見ていると、メンズは大器さん自身を男性像として作ってらっしゃるんだろうなって感じます。

鈴木:

メンズは作るのも、着せるのもぜんぶ自分が基準。好きなものしか作らないし、好きな着方しかしない。

——

ウィメンズコレクションの場合は、どんな女性像を思い描いてらっしゃるんですか?こういう洋服って世の中にあまりない気がするのですが。

鈴木:

そうなの? よくわからないけど。

——

まさにメンズ服のEGをウィメンズにしたっていうか。

鈴木:

もともとウィメンズは自分がやりたくて始めたものじゃないんだよね。
一同:
(笑)

鈴木:

「ウィメンズは絶対にやりません!」って言ってた。作れないし、着られないし、考えたこともないし、メンズとウィメンズは全然違うし。俺には絶対無理ですって。結局やってますけどね(笑)。最初はメンズのリサイズからスタートしたね。でも、作り始めたら、新しいことだからすべてが新鮮で面白くなってきて。で、こういうアイテムがあったらいいなとか、ちょっとチャレンジングな部分が芽生えて。当然スカートはメンズにはないわけだけど、ウィメンズにはあった方が幅が広がるし。自分のなかに蓄積してた記憶が少しずつ表に出てきて。

06

岡部:

例えば?

鈴木:

昔見た「L.L.BEAN」とか、金子功さんがやってた「PINK HOUSE」のスカートを思い出しながら作ったり。実はこの2012年秋冬シーズンは、自分の中に「PINK HOUSE」のイメージがすごいあった。裏テーマといってもいい。

岡部:

す、すみません。「PINK HOUSE」よく知らないんです……。

鈴木:

80年代の頭かな、すごい人気で。金子さんの「PINK HOUSE」はレイヤードが上手かった。例えば、丈の短いMA-1を着せて、その下にファンシーなプリントのロングスカートを合わせたり。金子さん本人も“デザイナー”って感じじゃなくてお洒落で好きだったな。また、奥さんがすごくキレイなひとで(笑)。
一同:
(笑)

岡部:

メンズのアイテムと可愛らしいものをミックスするのが上手な方だったんですか。

鈴木:

ファンシーで可愛い服を作るのが得意なデザイナーだったんだけど、コーディネイトはそこにメンズのMA-1とか、フィールドジャケットとか、無骨なアイテムを持ってくるのよ。それがカッコいいなっていつも思ってた。

岡部:

その感覚は共感できます。僕も真逆のものをあわせて、それでカッコ良く見せるっていうのが楽しいんですよね。“天の邪鬼”魂というか(笑)。

鈴木:

あ、それ、わかる! 上質な服があったら、どこから出て来たんだっていう、とんでもない服をあわせたくなっちゃう、俺も。そういう方が面白いじゃん。

岡部:

アハハハハ(笑)。

07

鈴木:

若い頃は、黒を基調にするなら、全身、最後まで黒がカッコイイって思っていたけど、歳を取ってくるとどんどんひねくれてくるんだよね。頭から黒だったら靴も黒だろって思うところを茶色にしちゃうとか。

岡部:

あー(うなずいて)。僕も、若い頃に黒と茶色をあわせるのってナシでしょ、って思っていたんです。でも「Ä」のデザイナーの佐々木一視さんが全身真っ黒なのに、靴とベルトだけ茶色にしているのを見て「あ、コレ、アリだ」って。固定概念を覆すような出会いは、価値観を変えられちゃいます。

鈴木:

俺はお店にいた期間が長いからそういう考え方なんだよね。セレクトショップって、いろんなブランドの製品があるわけだけど、それをとんでもない組み合わせでカッコ良く見せるっていうのが醍醐味。店の力量の見せ所とも言える。服を作ってるデザイナーはそんなことは期待してないだろうけど。で、自分が服を作る側になっても、思考はそのままなので、例えば、テーマを強く打ち出して、今季は全部ブルー、みたいな服作りは無理。いろいろあった方が楽しいって思っちゃう。売り場を作る感覚で洋服を作っているのかも。

岡部:

なるほどー。例えば、レイヤードのことは考えながら作っているんですか?

鈴木:

ものが最初にありきだね。まぁでも多少、考えてるのかな。長さの違うアイテムを組み合わせるのは好きだし。

岡部:

(ルックを指差しながら)こういうことですよね。EGの服は、すごく短いものと、すごく長いものを合わせたくなっちゃう。アンバランス感のなかのバランス感をいろいろと組み合わせながら探すというか。これが足し算のレイヤードでクリアできると、あ、出来た!っていう達成感を味わえる瞬間が来る。

鈴木:

お店で真面目に働いている連中は、そういうの上手いよ。沢山洋服を見てるし、着てるし、試行錯誤もしてるし。しかも、ちゃんと飾るスタイリングと着るスタイリングを使い分けている。

08

——

どういうことですか?

鈴木:

(イメージブックを持って)これは完全に魅せるスタリング。実際にこのまま着てみろっていわれたら少し、ね。でも若干地味になるけど、街でリアルに着るためのいい組み合わせを理解したうえで、ここでは強めに演出してる。見てくれた人になんだろうって思わせるように。

岡部:

そうですね。それは僕もすごく考えるところです。ビジュアル作りのときはいかにインパクトを出すかっていう。

鈴木:

ただ色や柄が派手なだけじゃなくて、“面白い”って思わせるようなポイントがないとね。さっき岡部くんが価値観変わったって言った、黒と茶色の合わせみたいな。着るコーディネイトにもポイントは必要だけど、やりすぎはダメ。ルックブックはやりすぎた方が面白い。徹底的に(笑)。

岡部:

先日届いたEGの2014年秋冬の展示会インビテーションの、右端のつなぎのコーディネイトがすごい好きです。洗練されたかっこよさとは違う、ちょっとチャーミングなかっこよさっていうか。

鈴木:

そういう感覚が近いのかもね。だから好きなんだろうな、岡部くんのスタイリング。滅多にこういうことないんだよ。ウチの弟にも感じないのに(笑)。

岡部:

雑誌とかで見るほかのスタイリストさんのスタイリングはかっこいいって思うんですけど、洗練された“カッコイイ”が多い気がするから、ちょっとカワイイ感じがあってもいいんじゃないかって常々感じてて。20周年パーティで大器さんに「スタイリングのファンです」って言ってもらえたことは、スタイルを貫いて、ひとつ何かを成し遂げたなっていう感覚です(笑)

——

「ENGINEERED GARMENTS」の2014年春夏コレクションは、NEPENTHES NYを会場にしてランウェイショーの形式で発表されましたね[※09]。

鈴木:

一回だけね。ランウェイショーをやったのは面白かったね。まぁ一回やれば充分だけど。

——

なぜランウェイショーを開催しようと思ったんですか?

鈴木:

ここ10年、20シーズン、ずっとピッティに出ていたんだけど、いい区切りだからここで止めようって決めて。それじゃあ代わりに何をやろうかって考えたときに、最初に思いついたのがランウェイショーだった。これまでずっとランウェイショーは意味がないし、まったく興味がないし、死んでもやるもんかって思ってたんだよね。周りにもそう言っていたので、逆にやってみようかなって(笑)。
一同:
(笑)

岡部:

ひねくれてますねー(笑)。

鈴木:

完全に天の邪鬼なんだよね、性格が。

——

笑ってますけど、岡部さんもそういうタイプですよね。

岡部:

そうです、完璧に(笑)。

——

ふたりの共通点は“天の邪鬼”。

岡部:

“天の邪鬼”って、あんまりいい言葉じゃないんだよって言われたことがあるんですけど、自分的には最高の褒め言葉だったりもするんだよなぁ。

——

大器さんは“天の邪鬼”って誰かに言われたりしますか?

鈴木:

言われるね(笑)。穿った視点の人だねって。みんなに「いい!」とか「よかった!」とか言われると(否定的に)「そう?」とか言っちゃう。

——

筋金入りですね……。

鈴木:

でも、昨日まで「最低だよ」って言ってたものを試してみて気に入ったら、翌日には「最高!」ってすぐ手のひら返しちゃう(笑)。

岡部:

ずるい(笑)。自由過ぎですね。

——

さて、3月15日発売の『BRUTUS』には、「ENGINEERED GARMENTS」 2014年春夏コレクションの特集ページがあって、そちらは岡部さんがスタイリングを担当されているそうで。

岡部:

はい。今季のEGはヒッピーやサイケデリックカルチャーがテーマ[※10]だったので、とにかく柄が強烈。見せ方はかなり悩みました。

鈴木:

(コーディネイトの写真を見ながら)いいね。安心して見ていられる。

09

——

これまでのコレクションも大胆な柄や色使いがありましたが、今季はいつも以上に鮮烈なコレクションですよね。とても新鮮だなと思ったんですが、なにか大器さんの気分に変化があったんでしょうか。

鈴木:

いや、偶然だね(笑)。コレクションを作り始める時って、ぼんやりとアイデアはあるんだけど、しっかりと考える前に生地屋さんがオーダーを取りにくるわけですよ。新しい生地が入ったから見てくれと。それで見に行くんだけど、まだ考えがまとまっていないから、勘で生地を選ぶ。感覚じゃなくて“ヤマ勘”みたいな勘。で、自分でも把握しきれないうちにどんどん注文して、生地が届き始めて、その生地の山を見て、「どうしてこんなことになっているんだ」って、いつも思う。それでも、どうにかして繋がりを作ってコレクションになる(笑)。

——

テーマをるより立ても“勘”が先でスタートするんですね。

鈴木:

今季も理由はないけど、今まで見たことのないプリントのファブリックが目に飛び込んできて。あとは、その生地をオーダーしたことが脳裏に焼き付いていて、無意識に基準にしてたんだろうね。合いそうとか、真逆でアクセントに使えそうとか。

——

その頃に読んでいたのがこの辺りの本、『1968 in AMERICA』『1968』『TIME 1968』だとか。

鈴木:

最終的にコレクションに繋がりを出す際の参考になればと思ってこの時代の本を取り寄せてみたんだけど。例えば、これ『1968 in AMERICA』は写真集だと思ってAmazonで注文したら、文字ばっかりで(笑)。失敗したなぁなんて思いながら読んでみたら、当時のボブディランの曲名とか、MUSIC、POLITICS、CHAOSみたいなこの時代のキーワードが意外にもイメージを掻き立てるんだよ。写真集からイメージを得る方が簡単だけど、言葉に刺激を受けるというのも面白いなって思った。まあ、最初にプリントの生地がありきだけどね。

10

——

そうして過去最高に鮮やかなコレクションが完成したんですね。

鈴木:

今回は製作の途中でランウェイショーをやるって決めたことも影響しているのかも。あんまりベーシックなコレクションより、派手な方が面白いかなって思っていた部分があったんだろうな。

11

——

ショーのスタイリングもすごいインパクトでした。

鈴木:

ランウェイショーって、当たり前のことだけど、お客さんの前でモデルが動くでしょ。だから正面だけかっこよくてもダメで、横からみても、後ろから見てもかっこいい必要がある。動きのなかでこそ美しい着こなしとか、全方向から見られることとかを意識したスタイリングは、チャレンジングで面白かった。

岡部:

イメージブックのコーディネイトとは別で、ランウェイ用のコーディネイトを組んだということですか。

鈴木:

そうだね。イメージブックの方はいつもの感じ。ランウェイはもっと刺激的に見えるように考えた。

——

イメージブックの方も見応えがあって充分に刺激的です。

岡部:

『BRUTUS』の撮影に臨むにあたって、この2014年春夏のイメージブックは相当意識しました。コーディネイトが似ていたら僕がスタイリングする意味ないですから。

鈴木:

そうだよね。まったく違う提案の方が見てる方は楽しいもんね。ウチの洋服はね、ひとつひとつ単体で見ると意外とベーシック。でも組み合わせていくと色々な面白さが出てくる。レゴブロックみたいな洋服なんだよ。

岡部:

いいですねレゴ! 足し算でどこまでも可能性が広がる服ですね。

鈴木:

シーズンが変わってもどんどん付け足していけるしね。

——

まさにレゴ!

岡部:

同じ生地を使ったアイテムが多くて、ネクタイとか帽子とか、小物まで揃っているからコーディネイトが楽しいです。

鈴木:

それは生地を無駄なく使いたいからっていう理由なんだけどね(笑)。言われてみれば、便利だよね。

岡部:

便利ですよ。すごく遊べるんで。それこそレゴみたいに。スタイリスト的には、やりがいがある服ですね。

——

ちなみに、この『BRUTUS』のなかで、読者に一番見てもらいたいのはどこですか。

岡部:

このコーディネイトですね(タブリエ(エプロン)を使ったカットを指して)。アウトサイドをシャンブレーで固めてインからサイケデリックプリントを見せました。ボトムはタブリエでシャンブレーの分量を増やして、サイケ柄はチラ見せに。ネクタイをサイケ柄に揃えるかどうか、最後まで悩みました。

鈴木:

ここ(ネクタイ)だけマドラスチェックっていう方が俺は好きだよ。

岡部:

これも好きです。(赤いショートパンツを使ったカットを指して)

鈴木:

これカワイイよね。

12

岡部:

このエプロン、イメージブックではジャケットの上から着てるんですよ。俺も上から着せたくなっちゃったんですけど、なんとかこのインに着る組み合わせに辿り着いて。

鈴木:

俺はこれ、最初は中に着せたいと思ったんだけど、最終的に上から着せたら面白いかもって辿りついた。思考回路のひとつとして、普通は外に着るものをインに、インに着るものを外に着せる、トップスをボトムスに使ってみる。裏返しにしてみる、というのがあるんだけど、そのアプローチが似てるよね。

岡部:

そうですね(笑)。

——

これで、今季は3タイプのスタイリングが見られるということですね。大器さんが手掛けたショーとイメージブック、そして岡部さんによる『BRUTUS』。ファンとしてはすごく嬉しいです!

鈴木:

ウチの服だけで組むのもいいけど、ぜんぜん違うブランドと組み合わせたらもっと面白くなると思うよ。今度はミックスもやってみたいね。

岡部:

あー、それは見てみたいですね。「ENGINEERED GARMENTS」のデザイナー・鈴木大器じゃなくて、スタイリスト・鈴木大器のブランドミックス、見たいです!

鈴木:

昔はやってたんだけどね、俺。『BRUTUS』とか『POPEYE』とか、『MENS CLUB』とか。

岡部:

えっ、そうだんですか!? じゃあ、それで卓爾さんも?

鈴木:

いや、俺はずっとショップで売り子をやってたから、スタイリストを始めたのは弟の方が早かったね。で、売り子を辞めて次の仕事が決まるまでの1年半くらいやってたかな。1番最初の仕事は『BRUTUS』13Pページ。そのあとすぐに『POPEYE』をやって。マガジンハウスの仕事をずっとやっていたんだけど、『MENS CLUB』に呼ばれて。『MENS CLUB』が初めて使った外部のスタイリストが俺だったんだよ。あれが88年。

岡部:

へー。いろいろなブランドやショップから大器さんが洋服をリースしてページを作ってたんですね。「スタイリストの鈴木です」ってアポイント入れて(笑)。

鈴木:

いや、それがすごい照れくさくて「スタイリストの鈴木」って言えなかった……。

岡部:

なんて言ってたんですか?

鈴木:

「鈴木ですけど」って。で、相手に「どちらの鈴木さんですか」って聞き返されたりして(笑)

岡部:

アハハハハ! じゃぁ、“鈴木”さんのブランドミックスがまた見られる日を楽しみにしています!

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岡部文彦 FUMIHIKO OKABE

スタイリスト。1976年生まれ。岩手県山田町出身。2000年に独立後、現在は雑誌を中心にスタイリングを手掛けるほか、アウトドアブランドの企画開発にも携わる。2010年には、農園芸ワークウェアブランド「HARVESTA!」を始動。同ブランドのデザインも手掛けている。

鈴木大器 DAIKI SUZUKI

NEPENTHES AMERICA INC.代表「ENGINEERED GARMENTS」デザイナー。 1962年生まれ。青森県弘前市出身。89年渡米。ボストン-NY-サンフランシスコを経て、97年より再びNYにオフィスを構える。 09年CFDAベストニューメンズウェアデザイナー賞受賞。日本人初のCFDA正式メンバーとしてエントリーされている。趣味はサーフィン。一年のほとんどを短パンで過ごしている。

対談で触れられた岡部文彦によるEG最新スタイリングに加え、
清水慶三によるスペシャルスタイリングも掲載された、注目のファッション特集号
BRUTUS No.7742014.03.15 OUT!

『BRUTUS』774号、恒例のファッション大特集号『勝手に着やがれ!』にて、今シーズンEGが公開した33ルックとはまったく異なった、岡部文彦によるスタリングが6ページにわたって掲載。鮮やかな色や柄、エプロンをはじめとする刺激的なアイテムが目白押しの最新コレクションをどのようにスタイリングしたのか。その答えは誌面で!そしてなんと同誌面には、「NEEDLES」デザイナー清水慶三もスタイリストとして登場。表紙のスタイリングを手掛けたほか、誌面でもスタイリストとして6ページ5体のコーディネイトを披露しています。
こちらも是非お見逃し無く!

必見の『BRUTUS』774号、3月15日(土)全国の書店にて発売。