
世の中には本当に面白い人がいます。この人を見ていて本当にそう思う。いや、そんなに良く知ってるわけではないんだけど。時々なんかの拍子にこの人に行き当たって、その都度いろいろ考えさせられる。もしかしたら天才って言う言葉はこういう人の事を言うのかなとか。圧倒的な才能ってのはこういうことなのかとか。でもどう考えても変態だよなとか。とにかくどう表現していいのか、正直迷う。だからかなあ。この人は絶対にもっともっと評価されてもいいのにと思う。
大概の人はこの人の大ヒットした一曲の歌で知ってると思う。
僕自身もそうだった。80年代の初め頃。お茶の水のシスコで買った?かなLPレコード。タイトルは「Too-Rye-Ay」。

彼の名前は、Kevin Rowland 。英国はもちろん、1年くらい遅れてアメリカでもナンバー1になった名曲、「 Come On Eileen 」で大ブレイクしたけど、何となく一発屋みたいな印象になってしまってる。そのヒット曲では裸にオーバーオールに革のベストとか、キャスケットを被っていて、貧しいジプシーのようなファッション。これも新鮮でカッコ良かったけど、これをきっかけに大ファンになった僕は彼らのファーストアルバムを手に入れて大ショック。さらにファンになってしまった。「 Searching for the young soul rebels 」アルバムの写真がめちゃかっこいい。「Geno」のPVなんか、ニットキャップを被った労働者ファッションがかなり良い。音も当然カッコ良いのだけど、これはきっと永岡がそのうち詳しく書いてくれるだろうから、僕はそれ以外の事を。
その後、3枚目のアルバム、「Don't stand me down」を手に入れてさらにびっくり。

今度はブルックスブラザーズのスーツを着たNYのビジネスマンに変身していたから。とにかくカメレオンのように格好が変わりまくって、一体この人はどんな人なのか全くつかめないのだけど、どれもみんなカッコ良い。その後のソロアルバム。「The Wanderer」ビジネス的には大失敗と言われたこのアルバムも、やっぱりジャケットはカッコ良い。何かラテン的な、インチキな雰囲気のだけどクラシックなスタイルはヤバい。そしてさらに11年後のソロアルバム。「My Beauty」見た瞬間に?????。一体ぜんたい、どうしてしまったのか。今度のジャケットは、何と女装。しかも半裸。
個人的にこの人、大好きです。いや、彼がゲイなのか、そうでないのか、それさえもよく知らないのですが、素晴らしい個性で、いつも自分に正直に生きていそうで、潔くて、良いなあと思います。カッコ良いミュージシャンは、たくさんいますが、この人はその中でも際立ってカッコいいのではないかなと思います。

もうちょっと誰か、取り上げてくれても良いと思うんだけどなあ。やっぱり、あのアルバムのカバーでダメにしちゃったかな。でもね、音楽は素晴らしく良いです。Beauty なんかは、スプリングスティーンがダメだししてサンダーロードが入らなくなったりしましたが、今聞くとホイットニーヒューストンの歌もより味があるように聞こえます。皆さん、彼をもう少し評価しましょう。ファッション雑誌の人にももっと取り上げてもらえれば良いと思います。とくに、Don't stand me down の This is what's she like を見てると今のトレンドに結構近いものを感じたりするんだよなあ。もっと調べるとさらに面白いことが出てくるような、そんな人だと思います。
デビッド・ボウイや、ポール・ウェラーもカッコ良いけど、コステロやこの人もかなりいい線いってると思います。
ではまた次回。
鈴木 大器 DAIKI SUZUKI
NEPENTHES AMERICA INC.代表
「ENGINEERED GARMENTS」デザイナー。
1962年生まれ。89年渡米、ボストン-NY-サンフランシスコを経て、97年より再びNYにオフィスを構える。
09年CFDAベストニューメンズウェアデザイナー賞受賞。日本人初のCFDA正式メンバーとしてエントリーされている。